宮川地蔵堂と門前

多度大社の東にある宮川の門前には、古に栄えた名産物商の町並みが残ります。
「大黒屋」は、多度山の湧水池庭園で、皇族方も立寄る鯉料理の老舗料亭です。

宮川地蔵堂は、古くから地蔵尊と薬師如来が安置され、毎年、盆行事があります。

祭礼日: 地蔵盆(毎年8月第3週土曜、日曜)
薬師盆(毎年9月第1週日曜日)

 愛宕社の五摂社のうち山の神は、多度大社の一拳社(ひとこぶしのやしろ)の御祭神でもある一言主神(ひとことぬしのかみ)であり、畿内の霊山に篭もって修行を続け、多度の山里人にも知恵と技術、とりわけ古代疫病に苦しんだ人々に、薬草と生きる気力を授けた薬師神である。

 多度大社の西にある八壺渓谷の禊(みそぎ)場所には、この神が宿るといわれている。また、多度山における薬師信仰の広まりは、多度神宮寺の創建にも大きな影響を与えたと考えられる。

 多度の薬師如来像(宮川に鎮座する宇賀神社の薬師神の権現)は薬箱を持たない御仏であり、交易で栄えた多度そのものが薬箱であったことが推測される。現在も、病気平癒を願う人々が、多数、多度山に参詣することは、その御神威といえる。

 古代の多度においても、薬師が、人々に薬草を越えた気力を授けるために、祈祷音(きとうね)とともに、雅楽を奏でたのであろう。神仏を慰める雅楽は、現代人にも人々に生きる喜びと勇気を与える癒しの音楽として広く受け入れられている。

 薬師に救いを求めた人々の切なる願いが音に現われ、多度の雅楽の音へのこだわりとなったのかもしれない。山の神が宿る「多度雅楽庵」にて楽を奏することは、禊によって心清らかにして音を研ぎ澄ますことにほかならない。

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